本コラムは、弊社顧問の鈴木が執筆しております。
本年3月30日に、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2026年度の供給計画を取りまとめ、公表しました。
その中で、2035年度までの長期の電力需要と供給力の見通しが示されましたが、データセンター等の増加に伴い電力需要が今後増大していくと想定される一方で、供給力については、国の脱炭素化の方針もあり発電事業者の投資判断が難しく、長期的な需給見通しは厳しい状況とされています。
これは、需要想定において、主にデータセンターの運開時期の後ろ倒し等により、蓋然性の高い需要を見極めることがより困難となっている一方で、供給力についても火力・ 原子力等の設備量や再エネ・蓄電池の導入量の将来に向けての不確実性が増しているため、発電事業者が座礁資産リスクを意識するあまり、積極的な新設・リプレース等の電源投資に踏み込むことが困難な状況になっていることに起因しているとされています。
こうした懸念も踏まえた今後の制度設計が待たれますが、ここでは電力需要と供給設備について戦後の大まかな変遷をおさらいしてみたいと思います。
目次
戦後~2000年頃(地域独占下での旺盛な電力需要増大に対する大規模設備投資)
・ 戦後の高度経済成長期や平成バブル経済期等を通じて、日本経済の拡大とともに電力需要は右肩上がりに増大し続けました。
バブル崩壊後も、産業用需要の停滞はあったものの、民生用における家電製品の大幅な普及や業務用施設(高層ビル、大型商業施設等)の増大などにより、2000年初頭まで電力需要は伸び続けました。
*1960年に全国で年間約1000億kWhだった電力需要は、1970 年に約3倍、1980年に約5倍、1990年に約8倍、2000年頃には約10倍(約1兆kWh)へと増大。
・ こうした旺盛な電力需要の増大に対しては、地域独占下の電力会社が供給義務を負い、発送配の垂直一貫体制のもと電源および送配電設備の建設に莫大な設備投資を行い、安定供給の責任を果たしてきました。
*東電のケースでは、2000年頃まで毎年1兆円程度の設備投資(1993年には最大1.7兆円)を実施。
・ このような投資資金の調達は主に社債発行と長期借入により行われたため、東電のケースで見ると、2000年頃の社債・借入金等の有利子負債残高は10兆円程度に上っていました。
これに伴い金利等の膨大な資金調達コストが発生しますが、それを支えたのが電気料金の総括原価方式でした。
あくまで効率的な経営が前提となりますが、総括原価には事業運営に必要となる適正な原価に加え、資金調達コスト(事業報酬)が含まれ、これを経産大臣の認可を受けた電気料金により回収する仕組みです。
この仕組みにより、電力会社は膨大な設備投資資金を賄うことが可能となり、
資金を提供する側の金融機関等もリスクを回避できました。
*当時の電力会社の社債に対する格付機関の評価は、トリプルAとかダブルA+といった高いものでした。
・ 戦後の経済発展に伴う旺盛な電力需要の増大に対し、安定供給によりこれを支えるためには、地域独占体制のもとで総括原価方式による経営の安定と巨額投資に伴うリスク回避が必要であり、 こうした制度の下で、各電力会社は電源や送配電の膨大な設備形成を計画的に実現できたのです。
2000年~2020年頃(自由化拡大下での電力需要の減退や、原子力不稼働、脱炭素化等に伴う電源構成の変化
・ 2000年に電力小売自由化が特高を対象に始まり、以後段階的に自由化範囲が拡大され、2016年には低圧まで全面自由化されるとともに、2020年には旧電力会社の送配電事業部門が法的に分離(分社化)されました。
・ その間、リーマンショックや東日本大震災、コロナ禍などを経て、日本経済が低迷する中、省エネの取組みなども進展してきた結果、電力需要はピークアウトし減少傾向で推移してきました。
*2000年頃から2010年頃まで1兆kWh程度で推移していた電力需要が、2020年には9000億kWh程度まで減少。
・ 一方、電源については、福島第1原子力発電所の事故以来各電力の原子力が停止し、再稼働が遅れる中、火力発電所の増設や稼働増により原子力停止による供給力不足を補ってきましたが、近年には脱炭素化の国の方針に伴い、再エネ電源を主力とする方向に政策が転換され、火力発電所については非効率な石炭火力のフェードアウトなど老朽火力の休廃止が進められる方向となっています。
自由化が始まった2000年代当初には、一部の新電力が自ら大型の火力電源を新たに建設して新規参入するケースもありましたが、近年においては需要の停滞、卸取引所の活性化、脱炭素化の要請等の状況から、再エネ電源以外の新規の電源開発は停滞してきています。
・ このような状況の中での電力自由化は、縮小するマーケットでパイを奪いあう価格競争になってきましたが、その間東日本大震災後の一時期を除き需給上の大きな問題は生じなかったため、先行きの不透明さや過剰設備への懸念などから、旧電力会社も含めた発電事業者は、再エネ以外のリスクを伴う電源投資には消極的になってきたのが実情と思われます。
2020年代~(データセンター等の新増設動向に伴う電力需要増大予測と今後の電源対応)
・ OCCTOによる電力需要見通しによれば、2023年の想定時には今後も長期的に電力需要は低下していくとの見通しでしたが、2024年の想定では先行き増加に転じ、2025年および2026年の想定ではデータセンター需要等の具体的な動静等も踏まえ更に増加していく見通しとなっています。
・ 仮に今後の電力需要がそのように推移していく場合、供給力(電源等の供給設備)もより増強の方向に局面が変化していくと思われます。
中長期の供給力確保のためには、長期脱炭素電源オークションや政策的な資金調達支援などの方策が進められていますが、先行きの不透明感等に伴う発電事業者の電源投資に対する消極的マインドを前向きに変えられるような制度設計が何より重要と思います。かつての総括原価方式に代わり発電事業者が積極的に電源投資を行える環境整備が必要です。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。
















コメント