本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。
————————————————–
2026年のゴールデンウィーク前後の期間、日本の電力市場では、例年同様に全国的な需要低下が見られました。
企業活動の停滞や過ごしやすい気候により、例年この時期は電力市場価格が下がりやすい傾向があります。
実際、関西・九州エリアでは5円/kWh台まで価格が低下する日も見られました。
一方で、東京エリアではGW前後も10~20円/kWh程度の価格水準が続き、他エリア対比で高止まりする日が目立ちました。
目次
GW前後も東京エリアの価格は相対的に高止まり
GW前後の平均スポット価格は図1の通りでした。
東京エリアでは15~20円/kWh近辺の価格帯が続いており、関西・九州エリアでは5~10円/kWh程度まで価格が低下した日も見られ、東京エリアは相対的に高い価格水準でした。
特に5月7日~8日にかけては、GW明けにもかかわらず東京価格が再び上昇している点が特徴的です。

東京エリアでは日ごとに価格形成パターンが大きく異なった
次に、東京エリアでGW前後の中でも特徴的だった3日間(5/1、5/2、5/8)の30分スポット価格推移を図2で比較しました。
5月1日は、朝方に価格が上昇する一方、昼間は比較的安定した価格推移となっていました。一方で5月2日は、太陽光発電の増加や需要低下などを背景に、昼間を中心に価格が大きく低下し、一部時間帯では0.01円/kWhまで下落しました。
しかし、GW明けの5月8日には再び夕方を中心に価格が上昇し、東京市場では需給逼迫時を想起させるような価格水準が形成されました。
このように、GW前後の東京市場では、例年とは異なり日によって価格形成パターンが大きく異なっていた点が特徴的でした。

残余需要と再エネ出力だけでは東京価格の高さを説明しきれない
東京エリアの残余需要(需要-再エネ出力)は図3-1の通りです。
一般に、残余需要が高い時間帯ほど火力電源への依存度が高まりやすく、市場価格も上昇しやすい傾向がありますが、実際、5月1日は朝方、5月8日は夕方にかけて残余需要が高い水準で推移しており、図2の価格上昇とも整合しています。
一方で、5月2日は昼間を中心に残余需要が大きく低下しており、0.01円/kWhまで価格が下落した背景として、図3-2の通り再エネ出力の増加が影響していたと考えられます。
ただし、今回のGW前後期間では、残余需要や再エネ出力だけでは十分に整理できない価格形成も見られました。
特に5月8日は、残余需要が極端な高水準、あるいは再エネ出力が極端な低水準というほどではない一方で、夕方価格は大きく上昇しました。
これは、単純な需給バランスだけではなく、市場参加者の価格形成行動や火力電源の運用状況や複数の要因が価格に影響していた可能性を示唆しています。


GW前後は火力電源の起動停止や運用水準も大きく変動していた
そこで次に、東京エリア火力ユニットの運用状況を確認します。
図4-1は、東京エリア火力ユニットの1日当たりの起動停止回数推移を示しています。
GW前後期間では需要低下や再エネ出力の増加の影響を受け、火力電源でも日ごとに起動停止回数が大きく変動していたことが分かります。
特に5月6日~9日にかけては、起動停止回数が再び増加しており、火力ユニット側で頻繁な起動停止調整が行われていた可能性が考えられます。
また、図4-2の通り、東京エリア火力ユニットの総発電量もGW前後期間に大きく変動していました。
5月2日~5日にかけては総発電量が大きく低下している一方、5月6日以降は再び増加しており、火力電源の運用水準自体が短期間で大きく変化しています。
今回のGW前後の東京市場では、再エネ出力増加による価格低下局面が見られた一方、火力電源の需給調整運用の影響も重なり、価格変動が増幅されていた可能性があります。


先物市場でも東京価格の高止まりが意識されていた
最後に、図5はGW前後期間の代表日(5/1、5/7、5/8)の東京ベースロード先物カーブを比較しました。
全体として、GW明けにかけても先物価格水準は大きく低下しておらず、2026年夏季を中心に20円/kWh前後の価格帯が維持されています。
GW前後期間では、東京エリアでは、GW明け後も相対的な高価格水準が継続的に織り込まれていたことがうかがえます。

まとめ
今回のGW前後期間の市場価格は、例年のように需給緩和による価格低下が見られた一方、東京エリアでは中東情勢や燃料価格の高い水準を背景にスポット価格が再び上昇する局面も見られ、価格変動が大きかったと言えます。
その背景として、残余需要や再エネ出力だけではなく、火力電源の運用状況、市場参加者の価格形成行動、さらには燃料価格見通しや市場心理なども含めた複合的な要因が影響していた可能性があります。
今回のGW前後の東京市場は、単純な需給緩和局面であっても価格が必ずしも大きく低下しないという、現在の東京市場における価格形成構造の一端を示していた可能性があります。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。















コメント