本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。
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前回のコラムでは、2026年4月以降に東京エリアを中心としてJEPXスポット市場価格が上昇している背景について、6月19日の制度設計・監視専門会合の議論を補足しました。
同会合では、中東情勢によるLNG価格上昇が主要因であるものの、2026年3月末の東電EP-JERA間の長期電力購入契約の終了、火力発電所停止や連系線制約、ブロック入札等の複数要因が価格上昇に影響した可能性が指摘されています。
しかし、「中東情勢による影響は何円だったのか」については必ずしも明確ではありません。本稿では、反事実(Counterfactual)の考え方を参考に、燃料価格で説明できる部分とそれ以外の部分に価格上昇を分解することで、中東情勢の影響を定量的に確認します。
分析の考え方
今回の分析では、図1の関係を前提として考えます。

「もし中東情勢が発生していなかったら」という「なかりせば」の世界を想定し、その場合の東京エリア電力市場価格を推定します。
東京エリア電力市場価格の実績と、この仮想的な市場価格との差を比較することで、中東情勢が市場価格へ与えた影響を定量的に分析します。
分析方法
分析には2024年1月~2026年6月の石炭価格、LNG価格、原油価格、為替のデータを使用しました。
本稿では厳密な反事実価格を推定する代わりに、燃料価格モデルによって説明できる部分と説明できない部分に価格上昇を分解し、中東情勢の影響を評価した。
各要因を比較した結果、石炭価格とLNG価格を説明変数とする燃料価格モデルが最も高い説明力を示しました。
採用した燃料価格モデルは下記です。
東京エリア電力市場価格
=−0.854+0.034×石炭価格+0.793×LNG価格
決定係数(R²)は0.755であり、この燃料価格モデルは東京市場価格変動の約76%を石炭価格およびLNG価格で説明できる結果となりました。
(図2 実績価格と燃料価格モデル価格)

分析結果
図2より、燃料価格モデルは東京エリア電力市場価格の推移を概ね再現できており、燃料価格が市場価格の主要な要因であることが確認できます。
2026年3月から6月にかけて東京エリア電力市場価格の実績はそれ以前と比較して平均5.6円/kWh上昇していました。
このうち約5.4円/kWhは燃料価格上昇によって説明されました。
今回の価格上昇の大部分は中東情勢に伴う燃料価格高騰によるものであったと考えられます。
図3は、価格上昇分を燃料価格要因とその他要因に分解した結果です。
(図3 価格上昇要因分解)

一方で、燃料価格だけでは説明できないその他要因(残差)も確認されました。
これは、中東情勢による燃料価格高騰だけでは説明できない要因が存在することを意味しています。
(図4 その他要因)

図4は燃料価格では説明できない価格上昇分の推移を示しています。
2026年3月を含む「平均」ではその他要因は約0.2円/kWhでした。
しかし、月次推移を見ると2026年3月に大きなマイナス値が観測されており、平均値を押し下げています。
これは東電EP-JERA間の長期電力購入契約終了前という特殊な要因が影響した可能性も考えられます。
また興味深いことに、2024年および2025年の4~6月はその他要因が価格を押し下げる方向に作用していたのに対し、2026年4月~6月は価格を押し上げる方向となっており、平均約1.6円/kWhの追加的な価格上昇が確認されました。
これは2026年春に燃料価格以外の要因による構造的な変化が発生した可能性を示唆しています。
考察
今回の分析から、2026年春以降の東京エリア電力市場価格上昇の主因は、中東情勢を背景とした燃料価格高騰であったことが確認できました。
一方で、燃料価格だけでは説明できない価格上昇分も存在しており、特に2026年4月以降に追加的な上昇圧力が継続している可能性が示されました。
制度設計・監視専門会合では、東電EP-JERA間の長期電力購入契約の終了、火力発電所停止、連系線制約、ブロック入札等の影響についても議論されています。
中東情勢が価格上昇の主因であったことは確認できたものの、燃料価格だけでは説明できない上昇分も存在しています。
次回は、燃料価格だけでは説明できない価格上昇分について、長期契約終了、火力発電所停止、連系線制約、ブロック入札等の要因から検証したいと思います。
(出典:JEPX、JKM、Aus-Newcastle、Dubai、WTI、FX)

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。

















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