JEPXスポット市場価格はなぜ上昇したのか ~2026年4月以降の価格高騰について制度設計・監視専門会合の議論を整理する~

本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。
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2026年4月以降、東京エリアを中心にJEPXスポット市場価格の上昇が続いています。
2026年6月19日に開催された電力・ガス取引監視等委員会 第21回制度設計・監視専門会合では、この価格上昇について分析・報告が行われました。
本コラムでは、会合で示された内容を整理するとともに、価格高騰の背景について補足します。

スポット価格高騰の状況

電力・ガス取引監視等委員会では、燃料価格高騰をはじめとする複数要因が重なったことにより市場価格が上昇したとの報告がありました。
特に東京、中部、東北、関西、北海道エリアにおいて価格上昇が顕著となっています。

(図1. エリア別JEPXスポット平均市場価格(2025年4月~2026年6月)

価格高騰の主因と増幅要因

今回の会合では、価格上昇の背景として以下の要因が示されました。

(1) 燃料価格高騰に伴う売り入札価格の上昇

昨今の中東情勢による燃料価格高騰を受け、発電事業者の限界費用に含まれる燃料費が10~15円/kWh程度上昇したことが報告されました。
その結果、売り入札価格が上昇し、市場価格を押し上げる要因となったと考えられます。

(図2. JEPXシステム価格とJKM換算理論発電単価の推移)

(2)東電EP-JERA間の既存契約終了

東電EPとJERAの間で締結されていた長期電力購入契約が2026年3月末で終了し、それに伴いスポット市場への売り入札・買い入札が増加したことが報告されました。

(3)東北-東京間連系線の運用制約

東北-東京間連系線の運用量増強工事の影響により、東京向きの運用容量が抑制された状態が継続しています。

(4)火力発電機停止による供給力減少

昨年度と比較して、火力発電機の故障や定期点検等により供給力が約300万kW弱減少していることも価格上昇要因として挙げられました。

(5)ブロック入札

ブロック入札とは、JEPX卸電力取引市場において連続する複数時間帯を一括して売買する入札方式であり、指定した時間帯の全てが約定するか、全く約定しないかの条件で取引されます。
2026年4月以降、売りブロック入札量の増加とともに約定量及び約定率が上昇していることが報告されました。

(図3. 売りブロック入札推移)

また、買い入札については、旧一般電気事業者及びJERAの買い入札価格・入札量が、新電力を大きく上回る状況となっています。

(図4. 買いブロック入札推移)

今後の対応

ブロック入札については、総じて約定率の向上は見られるものの、特に売りブロック入札については改善の余地があるとされています。
売りブロック入札をより小さなブロックに分割した場合のシミュレーションでは、高価格帯において約定価格の低下が確認されています。

また、ブロック分割時の起動費計上については、従来その運用が必ずしも明確ではありませんでした。
起動費を計上せずに分割した場合、歯抜け約定が生じる可能性があるため、事業者にとってブロック分割を躊躇する要因の一つとなっていました。

これに対し、2026年5月29日にJEPXより、ブロックを分割した場合でも各ブロックへ必要な起動費を計上できることが周知されました。
ブロックを分割した場合、そのうち一つのブロックのみが約定するケースも想定されるため、各ブロックに必要な起動費をそれぞれ計上することが可能であることが改めて明確化されました。
さらに、相対卸契約の締結増加を促す仕組みについても検討が進められる予定です。

まとめ

今回の会合で示唆的だったのは、ブロック入札が従来から存在する制度であったものの、今回の価格高騰局面において価格形成への影響が改めて顕在化した点です。

また、5月29日のJEPXを通じた対応は制度そのものを変更したものではなく、ブロック分割時の起動費計上に関する運用を明確化したものと位置付けられます。

今後、この対応により市場参加者の入札行動がどのように変化するのか、また約定率や市場価格形成にどのような影響を与えるのかについても注視していく必要があります。

今回の会合資料及び図2を見る限り、価格上昇の主因は燃料価格高騰であると考えられます。一方で、東京エリアを中心とした価格上昇幅については、燃料価格要因のみでは説明しきれない可能性もあります。

今後、弊社では燃料価格の変動から推定される理論的な価格上昇幅と実際の市場価格上昇幅を比較し、その差分を市場構造要因として整理する分析を試みたいと思います。

(出典:電力・ガス取引監視等委員会で第21回制度設計・監視専門会合、JEPX)

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