本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。
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最近、再生可能エネルギー発電事業において既存FIT案件のFIP転換+蓄電池併設への関心が高まっています。
背景には、政府によるFIT電源のFIP電源への移行促進、九州エリア等での再エネ出力制御の増加、FIT制度終了後の収益確保といった課題があります。
一方で、「本当に経済性があるのか?」という疑問もあると思います。
そこで今回は九州エリアの既存屋根置き太陽光発電所を想定し、FIT継続ケースとFIP転換+蓄電池併設ケースの経済性を比較してみました。
(図1:FIT継続とFIP+蓄電池の比較イメージ)

試算の前提
九州エリアで公表されている既存屋根置き太陽光発電案件(FIP転換+蓄電池併設計画あり)を参考に、約1.5MWの太陽光発電所および出力2.56MW、容量8.94MWhの蓄電池を想定して試算を行いました。
本案件は2013年度にFIT認定(36円/kWh)を取得し、2027年にFIP転換および蓄電池導入(COD:運転開始)を実施、2034年9月のFIT/FIP期間終了後は市場売電またはコーポレートPPAによる運用を想定しました。
以下の2ケースを設定し、事業期間は2027年から2046年までの20年間、蓄電池は卸電力市場(アービトラージ取引)、需給調整市場および容量市場への参加を想定しています。
・ケース1 FIT継続
・ケース2 FIT→FIP転換+蓄電池併設
試算結果
20年間の収益性を試算した結果、以下の通りです。
・ケース1 FIT継続→約640百万円
・ケース2(1) FIP+蓄電池(市場売電型)→約800百万円
・ケース2(2) FIP+蓄電池(コーポレートPPA型)→約860百万円
今回の試算では、FIT継続と比較してFIP転換+蓄電池併設の方が高い収益性を示す結果となりました。
また、FIP期間終了後の売電先としてコーポレートPPAを想定したケースでは、市場売電を前提としたケースを上回る結果となりました。
なお、両ケースとも需給調整市場および容量市場への参加を前提としています。
ただし、これらの結果は将来の市場価格等の前提条件に大きく左右される点には留意が必要です。
(図2:FIT継続、FIP+蓄電池(市場売電型)、FIP+蓄電池(コーポレートPPA型)の比較)

収益を押し上げた要因
FIP転換+蓄電池併設によって、どのような価値が生み出されるのでしょうか。
今回の試算では、FIP転換による収益改善、出力制御回避、自家消費率向上に加え、アービトラージ取引、需給調整市場および容量市場への参加による収益を考慮しました。
最も大きな収益向上要因となったのは需給調整市場収益および容量市場収益でした。FIP転換による収益改善や出力制御回避も一定の効果は見られたものの、収益全体への寄与という観点では相対的に小さい結果となっています。
今回の試算結果から、FIP転換+蓄電池併設の経済性は、一般に注目されがちなFIP転換による収益改善よりも、むしろ蓄電池を活用した市場参加による収益機会と、将来の市場価格水準に大きく依存することが分かりました。
(図3:価値ドライバー分析)

留意点
もちろん、本試算結果は一定の前提条件に基づくものであり、実際の事業収益を保証するものではありません。
特に、
・FIPプレミアム価格
・電力市場価格(太陽光実現価格)
・コーポレートPPA価格
・需給調整市場価格
・容量市場価格
・出力制御率
などによって結果は大きく変化し得ます。
したがって、本試算結果をそのまま一般化することはできず、個別案件ごとのエリア特性や事業の前提条件、市場環境を踏まえた詳細な検討が必要です。
まとめ
今回試算したケースでは、既存FIT案件に対するFIP転換+蓄電池併設は、一定の条件下で経済合理性を有する可能性が示されました。
実際に試算してみると、収益向上の主要因はFIP転換による収益改善よりも、蓄電池を活用した市場参加による収益機会でした。
今後、出力制御の増加やFIT満了案件の増加が見込まれる中で、FIP転換+蓄電池併設は有力な選択肢の一つになると思われます。
ただし、その経済性はエリア特性や事業の前提条件、将来の市場価格に大きく依存します。
FIP転換+蓄電池併設は収益機会を拡大する一方で、FIT制度が持っていた価格固定の安定性を手放し、市場リスクを引き受ける事業モデルでもあるということです。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。
















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