本コラムは、弊社顧問の鈴木が執筆しております。
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電気料金は一般的に「契約種別」毎に設定され、電圧や使い方に応じた様々なメニュー、プランが用意されています。
しかし、旧一般電気事業者(以下、「地域電力」)の契約種別(メニュー)の適用対象の境目にはグレーゾーンがあり、お客さまとのトラブルを招くケースもありました。
ここでは従前から物議を醸してきたグレーゾーンと最近の動向について見てみます。
業務用と産業用
従来、各地域電力における高圧以上の主要な契約種別は「業務用」と「産業用」に区分されてきました。
「業務用」は主に事務所、官公署、商業施設、娯楽施設、金融機関、病院、ホテル、学校・研究所などの第三次産業が対象となり、「産業用」は主に鉄鋼、紙パ、化学、石油等の素材型工場や、自動車、電気機器、精密機器、食料品等の加工型工場などの第二次産業が対象となっていて、この「業務用」と「産業用」という大きなグルーピングのもと、それぞれ異なる料金が適用されてきました。
異なる料金となっている根拠はそれぞれの電気の使い方の違いとされ、「業務用」の場合には、事務所、官公署、学校などのように、朝に営業や業務を開始し、夕方に終了するといった業種が多く、電気の使用も平日昼間が主体で所謂「負荷率」が低いのに対し、「産業用」の場合には、交代勤務やロボット導入等による連続操業なども多く、「負荷率」が高いことから、電気の供給設備の利用効率やそれに伴うコスト負担も異なるため、相対的に業務用は産業用よりも高く設定されてきたものです。
しかしながら、業務用と産業用といっても、単純に業種だけでは区分しにくいケースも現実には生じます。
例えば、研究所での連続試験、コンビニ等の24時間営業、近年ではデータセンターの連続稼働など、業務用とされてきた業種でも負荷率の非常に高い業種もあり、これらのグレーゾーンのお客さまから見れば「こんなに負荷率が高いのに何故産業用よりも高い料金が適用されるのか」といった疑義が生じるのも当然です。
加えて今日ではスマートメーターが普及し、契約種別や業種に関わらず個々のお客さまの使用実態が30分刻みで把握できる状況となっており、グレーゾーンを生じさせる「業務用」と「産業用」というグルーピングにより異なる料金を設定する根拠が乏しくなっていると思われます。
地域電力は長年こうした種別区分のもとでお客さまと契約しており、その影響等も考慮すると抜本的に見直すことは簡単ではありませんが、新規参入の小売事業者(新電力)の場合はそうした制約もなく、個々の使用実態に応じた提案ができていると思われます。
そうした状況も踏まえてかどうかは分かりませんが、東京電力エナジーパートナー(EP)の公表によれば、高圧以上の新しい標準メニューでは、2026年3月末で「業務用」と「産業用」の区分が廃止され、4月から新たな料金体系に全面的に移行されたとのことです。
(他の地域電力の標準メニューは、引き続き業務用と産業用の区分が継続されているようです。)
高圧(産業用)の500kW以上と未満
高圧の契約においては、500kW以上と未満とで基本料金の対象となる契約電力の決定方法が異なっています。
500kW以上の場合、お客さまの設備容量や稼働状況等に基づき協議により決定されますが、500kW未満の場合は、協議によらず直近1年間の最大需要電力の実績に基づき自動的に決定されます(実量制)。
500kW以上の「協議制」は古くから採用されてきた方法ですが、500kW未満の「実量制」は1988年に導入された方法です。
それ以前は、500kW未満の場合受電設備容量等に基づく計算式により契約電力を決めていたため、個々のお客さまの最大電力を測定していませんでした。
しかし、例えば計算式に基づく契約電力は同じ100kWでも、実際の最大電力は150kWのお客さまもいれば50kWのお客さまもいて負担の公平を図るべきということになり、500kW未満にも実際の最大需要電力に基づく実量制が導入されものです。
業務用の場合、高圧の料金は500kW以上も未満も同じ料金でしたが、
産業用の場合、500kW以上と未満とで料金が異なる設定(500kW以上は未満よりも基本料金が高く、従量料金が安い設定)になっていましたので、500kW未満のお客さまの最大電力を測ったら実際には500kWを上回り適用料金も変わってしまうというケースが生じました。
特に負荷率の低いお客さまの場合、契約電力が増加する上に基本料金単価のアップも加わり大きな負担増となりました。
それまでは500kW未満のいわばグレーゾーンにいたのに実測したら突然種別変更となり大きな影響を受けたお客さまには、「勝手に制度変更をされて不当だ」と受け止められ、中には訴訟になった事例も生じました。
東電EPでは、この産業用における500kW以上と未満の種別区分も、前記の業務用と産業用の廃止に併せて2026年3月末をもって廃止されました。
(他の地域電力では、引き続き区分が継続されているようです。)
低圧の高圧化
低圧の場合、高圧と比べ低圧に電圧を変換するための変圧器や低圧配電線といった追加の供給設備が必要となることなどから、高圧よりも高い料金が設定されていますが、
この料金の差異を背景に、高圧の自由化が始まった頃から低圧の高圧化が盛んになりました。
それまで低圧受電が一般的だったコンビニの高圧化とか、各戸毎の低圧(電灯)契約だったマンションの高圧一括受電化などが代表です。
低圧受電の場合高圧よりも高い料金のため、高圧受電とすることにより料金低減のメリットを享受しようという目的です。
ただし、高圧化する場合には、お客さまが自ら受電設備(高圧から低圧への変圧器等)を設置するとともに、電気工作物の保安責任を負うことになる(外部委託可能)ため、それに伴う費用負担が生じますので、料金削減との見合いで実施するかどうかが判断されることになります。
コンビニの高圧化等の場合には関係する企業の経営判断になりますが、マンションの高圧化の場合には一般住民の集合住宅のため、上記のような経済的利益があれば良いという単純なものではなく、個々の住民の選択肢や消費者保護の観点から問題が起こるケースもあります。
高圧が自由化された際に家庭用などの低圧への自由化拡大については慎重に検討するとされていた中で、高圧一括受電の場合には実質的に家庭用も自由化されており、グレーゾーンだったとも言えます。
低圧も含めた全面自由化になった現在でも、マンション一括受電は引き続き行われていますが、小売電気事業者にとってはあくまで高圧一括の契約者への供給であり、その先の各戸への供給は、一括受電するマンションの管理組合なり委託を受けた事業者なりが行うことになります。
その場合、入居者によっては他の小売事業者のメニューを選びたいといった希望があっても選択できないといったトラブルが生じることも考えられますので、管理組合なり一括受電事業者なりが入居者に丁寧に説明することが必要になるわけです。
今年4月に「電力の小売営業に関する指針(ガイドライン)」が改定されましたが、主な改定内容として「高圧一括受電者は最終消費者である入居者に対し小売電気事業者に求められるのと同等の保護策(文書交付、説明会等)を行うことが望ましい」という趣旨が記載されましたが、前記のようなトラブル等が背景にあるのかもしれません。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。
















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