本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。
本稿の結論は、九州は「需給が直接価格を決める市場」、東京は「複数要因で価格が決まる市場」である点にあります。
FY2025のJEPXスポット価格を振り返ると、エリア間で顕著な差が確認されます。
特に東京エリアと九州エリアは、価格水準だけでなく日内構造にも明確な違いが見られます。
本稿では、電力市場の代表的な2エリアである東京と九州に着目し、電力価格の地域差の構造的要因を整理します。
目次
東京と九州の価格構造の違い

東京と九州のJEPXスポット価格を比較すると、日内パターンは共通の「ダックカーブ」を示しつつも、その振れ幅が大きく異なります。
・東京エリア:昼はやや低下、夕方に緩やかに上昇
・九州エリア:昼間に大きく価格が低下し、夕方に急騰
同様の価格構造を持ちながらも、価格変動の強さ(ボラティリティ)が大きく異なる点が特徴です。
需要構造はほぼ共通

電力需要の時間構造を比較すると、両エリアに大きな差はありません。
・夕方〜夜にピーク
・昼間は相対的に低水準
つまり、需要だけでは価格差は説明できないことが分かります。
再エネ余剰(高予備率)の違いが本質

両エリアの違いは、予備率に明確に表れます。
・東京:昼間でも20%前後にとどまる
・九州:昼間に予備率が大きく上昇(再エネ余剰)
これは、再生可能エネルギーの導入量と系統構造の違いを反映しています。
「時間」ではなく「需給状態」で見る
本稿では時間帯ではなく、以下のような需給状態で整理します。
・再エネ余剰(例:10–14時)
・需給タイト(例:18–22時)
これにより、価格形成の本質的なドライバーを抽出できます。
予備率と価格の関係(相関分析)

予備率と価格の関係を見ると、エリアごとの差がより明確になります。
・東京:同じ予備率でも価格が安定しない
・九州:再エネ余剰時に価格が大きく低下
相関係数:
・東京:-0.17
・九州:-0.62
東京では需給と価格の関係が分散しており、価格決定に複数の外生要因が関与していることが示唆されます。
一方、九州では特に昼間は限界費用がゼロに近い再エネが価格を支配するため、価格が下限に張り付きやすい構造となっています。
なぜ東京と九州で差が出るのか
この違いは以下の構造要因によります。
【東京】
・需要規模が大きい
・火力が限界電源
・他エリアからの連系線流入あり
→ 火力限界費用、連系線フロー、原子力稼働状況の影響が重なり、需給単独では価格を説明できない構造となっています。
【九州】
・再エネ比率が高い
・昼間に供給過剰(再エネ出力制御)
→ 需給が価格に直接影響
まとめ:電力価格は「需給 × 市場構造」で決まる
・短期:需給状態が支配
・長期:燃料価格が支配
ただし、その効き方は市場構造によって異なる
九州:需給 → 価格(直接)
東京:需給 → 価格(間接・複合)
このような電力価格の地域差は、蓄電池運用や電力トレーディングの収益機会にも直結します。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。

















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