本コラムは、弊社顧問の鈴木が執筆をしております。
今回の中東紛争に伴いホルムズ海峡の封鎖がもたらす影響が懸念されていますが、50年ほど前に読んだ「油断」(「石油が断たれる」の意)という小説を思い起こしました。
1975年に出版された堺屋太一氏(当時通産省の官僚で、退官後は民間閣僚として経済企画庁長官なども歴任)の著書で、ほとんどを中東に依存していた石油が断たれた場合の影響を予測して描いた小説です。
中東情勢の影響
このたび半世紀の時を経て、油断が起こりそうな瀬戸際の状況を迎えております。
ナフサが途絶えた場合の様々な製品への影響とか、ガソリンが途絶えた場合の運送業等への影響、重油が途絶えた場合の農業生産等への影響、更には様々な物品の消費節約の必要性などがマスコミで取り上げられています。
仮に中東からの石油やLNGが途絶えた場合、電気事業への影響も少なくありません。
電源の7割程度を中東からの石油に依存していた50年前と比べれば、現在は1割程度に依存度が低下していることに加え、LNG、石炭などの輸入先が他地域に分散しています。
また化石燃料以外の原子力、水力、再エネなども増加して電源構成が当時よりも大幅に多様化しているため、すぐさま大停電のような事態にはならないと推測されます。
しかし、中東からの石油や一部のLNGが断たれれば相応の影響も考えられ、それが長引けば顧客への節電の要請を行うといった事態も予想されます。
仮に供給力(燃料)が不足し、東日本大震災後に東電が行ったような計画停電を実施する事態が起こるとすると、その影響は甚大なものになると思われます。
停電の際の影響
東電時代に計画停電の実施に携わり、様々なお客さまのご不便を直接お聞きした経験から、当時の状況等を踏まえた計画停電による各分野への影響について、思いつくまま列挙してみます。
(鉄道)鉄道は車両が長い線路を移動するため、その一部の区間の停電であっても広範囲の運行に支障が出て、通勤難民や帰宅難民など社会全般に大きな影響を及ぼします。
現に、東日本大震災に伴う計画停電の際には、鉄道運休により多くの従業員が出社できず休業せざるを得ないといった事例もありました。
(病院)緊急を要する手術、人工呼吸、腎臓透析などに支障を及ぼし生命にかかわる事態
を招く恐れがあります。(多くの病院では非常用発電機が常備されています。)
(警察)信号機が停電になると、交通マヒや事故防止のために、警察官が手旗信号で交通整理を行うことになるなど、広範囲、長時間に及ぶと大きな影響が出ます。
(消防)消火設備や警報設備のバッテリーが切れてしまうと、消火活動に支障となります。
(自衛隊)自衛隊の基地が長時間の停電になると、ヘリコプターの発着が困難になるなど、災害時の救援活動等に支障をきたします。
(石油)石油精製工場が長時間停電になると、ガソリンスタンド向け等の燃料供給に支障をきたし、運送や国民生活等に影響が生じます。
また、石油化学工場へのナフサ等の原料供給が途絶えると様々な製品の生産に支障が生じます。
(自治体等の行政機関)行政サービスの停滞や、災害時の広報、避難所対応等に支障が生じます。
(通信)携帯電話会社の基地やシステムが停止すると、様々な決済や災害時の情報取得、安否確認、救急活動などが麻痺し、国民生活にも影響を及ぼします。
(銀行)決済システムの停止等により経済活動全般に支障が生じるとともに、ATMサービスが停止すると国民生活にも影響が及びます。
(上下水道)飲み水やトイレの水洗等が確保できない状態が長時間続くと、国民の生命や生活にも影響を及ぼす恐れがあります。
(工場等)製造ラインが停止し製品の生産・出荷が滞るとか、製造途中の製品が不良品になるといった影響や、工場設備の保全、人身の安全等への影響が生じます。
(業務用施設)商業施設、事務所ビル、レジャー施設等の照明、システム、エレベーターなどが停止すると、顧客の混乱を招くとともに、テナントや飲食店等の業務にも支障が出るため、営業停止といった事態も招きます。
(家庭)前記の携帯電話や上下水道の他にも、テレビやパソコンによる情報取集、照明、空調等に支障が生じます。マンションの場合は、更にエレベーター、給水ポンプ等にも影響が出ます。
他にも様々な影響が生じると思いますが、上記は私の経験の範囲で思い起こした例で、いずれも広範囲で長期間繰り返し実施される計画停電の場合の影響です。
通常の短時間停電の場合は、各分野で非常用発電機やバッテリー、蓄電池等の自衛措置が講じられているものと推測されます。
しかし、燃料不足に伴う計画停電が長期間繰り返される場合には、肝心の非常用発電機の燃料が途絶えてしまうようなことも予想されます。
職場や生活の中で停電が起こった場合にどのような影響が生じるかを想定して普段から備えておくことが肝要だと思います。

代表取締役社長 高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。















コメント