LNG価格と電力市場価格はどこまで連動するのか ― データで見るJEPXと燃料価格の関係

本コラムは、弊社取締役の上野が執筆をしております。

JEPXスポット価格とLNG・石炭・原油・為替のデータから、電力市場の価格構造をデータ分析で読み解きます。

電力市場を理解するうえで、最も基本的な問いの一つがあります。
それは、
「電力価格は燃料価格にどの程度影響されるのか」
という問いです。

日本の卸電力市場(JEPX)のスポット価格では、発電コストが大きく影響します。特に火力発電の場合、燃料価格は発電コストの大部分を占めるため、電力市場価格との関係は非常に重要です。
本記事では、2021年4月以降のデータを用いて、

LNG先物
石炭先物
原油先物
為替レート
電力市場価格(JEPXスポット・システム価格)
の関係をデータから確認してみます。

エネルギー価格と電力市場価格の動き

まず、エネルギー先物価格と電力市場価格を指数化して比較してみます。
※2021年4月を100として指数化しています。

図1:エネルギー先物価格と電力市場価格の指数(2021年4月=100)

2021年から2022年にかけて、LNG先物価格が大きく上昇していることが分かります。これはロシア・ウクライナ危機や世界的なエネルギー需給逼迫の影響によるものです。
同じ時期にJEPX価格も上昇しており、燃料価格と電力市場価格が連動している様子が視覚的に確認できます。
ただし、完全に同じ動きではありません。電力市場価格は燃料価格以外にも、需要や気温、再生可能エネルギーの出力など、様々な要因の影響を受けます。
そこで次に、LNG先物価格と電力市場価格の関係を直接確認してみます。

LNG先物価格と電力市場価格の関係

次の図は、LNG先物価格と電力市場価格の散布図です。

図2:LNG先物価格と電力市場価格の散布図

散布図を見ると、LNG先物価格が高くなるほど電力市場価格も高くなる傾向が見られます。
実際に計算した相関係数は、

約0.75でした。

これはかなり高い相関であり、電力市場価格が燃料価格の影響を強く受けていることを示しています。

回帰による関係の可視化

同じデータに対して、単回帰直線を引いてみます。

図3:LNG先物価格と電力市場価格の回帰関係

回帰直線は明確な右上がりになっています。

つまり、

LNG先物価格が上昇すると電力市場価格も上昇するという関係がデータから確認できます。

もちろん、実際の電力市場は単純ではありません。需要、気温、発電設備、再エネ出力など多くの要因が価格に影響します。
しかし燃料価格が電力価格の重要な要因であることは、この図からも読み取ることができます。

エネルギー市場全体の相関

次に、エネルギー価格全体の相関を確認してみます。


図4:エネルギー価格と電力市場価格の相関

相関行列を見ると、

LNG先物と電力市場価格:0.75
石炭先物と電力市場価格:0.73
原油先物と電力市場価格:0.57
となっています。

LNGや石炭など、発電燃料との相関が高いことが分かります。一方で、為替と電力市場価格の相関はそれほど高くありません。

短期的な電力市場価格の変動は、為替よりも燃料価格の影響を受けやすいと言えそうです。

燃料価格と電力価格の時間差

最後に、燃料価格の変化が電力価格にどのくらいの時間差で影響するのかを確認します。

図5:LNG先物価格と電力価格のラグ相関

クロス相関を計算すると、最大相関は約4日遅れで現れました。

これは、

燃料価格
→ 発電コスト
→ 発電事業者の入札
→ 市場価格

というプロセスを経て、燃料価格の変化が電力市場に反映されるまでに数日の時間差があることを示唆しています。

まとめ

今回のデータ分析から、次の点が確認できました。

電力市場価格は燃料価格と強く連動しています
LNG先物価格と電力市場価格の相関は約0.75です
燃料価格の変化は数日遅れて電力価格に反映されます
電力市場価格は複雑な要因によって動きますが、その基本構造の一つは

「燃料価格 → 電力市場価格」

という関係にあることが、データからも確認できます。

データから見ると、電力市場の価格形成には明確な構造が存在していることが分かります。
今後の記事では、電力市場の価格データをさらに詳しく分析し、分布や時系列構造などについても見ていきたいと思います。

本コラムでは今後「電力市場のデータサイエンス解体新書」と題し、電力市場データを統計・機械学習の視点から分析していきます。

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