日本電力調達ソリューション代表の高橋優人です。
こちらでは、私がお客様とやりとりさせていただく中で気づいたこと、ニュース記事を見て学んだこと等をリアルタイムで発信しています。
読んでくださる方にとって、有益な情報になっていれば幸いです。
電力市場の価格高騰は、しばしば「一つの原因」で説明されがちです。
しかし、実際には複数の要因が同時に発生し、市場構造と結びつくことで価格が大きく動きます。
日本の電力市場において象徴的だったのが、2021年冬のJEPX価格高騰と、2022年の電力危機です。
この2つの出来事は性格が異なるものの、共通しているのは「複数の要因が同時に発生し、需給が急激に崩れた」ことです。
2026年3月中東情勢との違いも混じて、お話しさせていただきます。
▼2020年4月~2025年3月の電力市場価格
参照:JEPX https://www.jepx.jp/electricpower/market-data/spot/ave_month.html

2021年冬:JEPXが“売り切れ状態”になった
2021年1月、日本卸電力取引所(JEPX)の価格は一時200円/kWh近くまで急騰しました。
この高騰は、単一要因ではなく「需要急増+燃料不足+市場構造」が同時に発生した結果でした。
①寒波による電力需要の急増
2021年1月、日本列島は断続的な寒波に見舞われました。
暖房需要が急増したことで電力需要は急激に拡大し、電力需給は一気に逼迫しました。
②LNG不足で火力発電が増やせなかった
日本の電力の約3割はLNG火力です。
しかし当時は
・世界的な寒波
・中国や欧州の需要増
・LNGスポット価格の高騰
が重なり、日本向けLNGの確保が難しくなりました。
その結果、需要が増えても火力発電を十分に増やせない状況となりました。
③雪で太陽光発電が低下
さらにこの冬は積雪も多く、太陽光発電の出力が大きく低下しました。
地域によっては発電量が50%以上減少するケースもあり、再エネによる補完も期待ほど機能しませんでした。
結果:市場の「売り注文」が消えた
こうした状況の中で市場では
• 売り電力が出てこない
• 買い注文だけが残る
という状態が発生しました。
言い換えると、JEPXが実質的に「売り切れ状態」となり、価格が急騰する結果となりました。
2022年:電力危機と「電力難民」
2022年の電力価格高騰も、やはり単一要因では説明できません。
当時は、世界的燃料価格高騰+円安+国内供給余力低下+市場構造
が同時に発生していました。
①世界的燃料価格の急騰
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。
欧州はロシア産ガスの代替としてLNG調達を急拡大し、世界の天然ガス市場は大きく混乱しました。
その結果、
• LNG
• 石炭
といった発電燃料の価格は2020年比で数倍に上昇しました。
②円安による輸入コスト増
同時に2022年は急速な円安が進行しました。
燃料価格の上昇に加え、為替によるコスト増が日本の発電コストをさらに押し上げました。
③国内供給余力の低下
電力自由化以降、採算性の低い老朽火力の休廃止が進み、日本の電力システムの供給余力は徐々に低下していました。
さらに2022年3月には福島県沖地震により複数の火力発電所が停止し、東日本の需給は急激に逼迫します。
このとき政府は「電力需給ひっ迫警報」を発令しました。
④市場構造:新電力のJEPX依存
もう一つ重要なのが市場構造です。
多くの新電力は
• 発電設備
• 長期燃料契約
を持たず、電力調達の多くをJEPX市場に依存していました。
そのため市場価格が急騰すると、
• 調達コストが急増
• 固定料金契約では採算が取れない
という状況に陥りました。
結果:電力難民の発生
こうした状況の中で
• 契約解除
• 料金改定
• 新規受付停止
が相次ぎました。
その結果、契約先を失う「電力難民」が多数発生する事態となりました。
電力市場は「複合危機」で動く
2021年と2022年の経験が示したのは、電力市場は単一要因ではなく
• 天候
• 燃料価格
• 為替
• 発電設備
• 市場構造
といった複数の要素が重なることで大きく動くということです。
電力は社会インフラである一方、その価格は国際エネルギー市場と密接に結びついています。
2026年3月中東情勢
ホルムズ海峡実質封鎖、原油価格高騰、LNG高騰、等、不安になるニュースを連日のように目にします。
2021年と2022年は、「供給リスク」による高騰でした。しかし現在は、「輸送リスク」が引き起こしている価格上昇です。
また、日本の電源構成、LNG調達ルート等を考えると、すぐに供給力が大幅に低下することは考えにくいです。
もちろん、平時に比べると価格はじわじわと上がると予想されます。
しかし、「生産能力が完全になくなったわけではないこと」このような状況からも、現在はまだ「供給ショック」ではないと考えられます。
(※なお、本コラムでは、電力に限った内容です。ガソリン代等とは、別の動きをします。ご容赦ください)
反対に言えば、ホルムズ海峡の完全封鎖、石油施設破壊等が起きると、供給面への影響が出てきて、更なる価格上昇が起きる可能性が高くなります。
引き続き、状況を注視していくことが必要でしょう。

代表取締役社長
高橋 優人
新卒で九州電力に入社し、約7年間在籍。在籍時は、電力の法人営業、ガスの個人営業等に従事。その後、エネルギーベンチャー企業を経て、日本電力調達ソリューションに参画。2024年9月に代表取締役社長に就任。
















コメント