日本電力調達ソリューション代表の高橋優人です。
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企業の脱炭素経営が高度化する中で、再エネ証書は単なる「環境配慮の選択肢」から、Scope2排出量算定や国際イニシアチブ対応を左右する重要な経営要素へと位置づけが変わってきています。
今回は、主要な再エネ証書の制度設計と実務上の論点を整理いたします。
再エネ証書の制度的整理
再エネ証書は、電力の持つ「環境価値」を電気そのものから切り離し、属性情報として証書化・取引する仕組みです。GHGプロトコルでは、Scope2排出量算定において「マーケット基準」を採用する場合、適格な証書の利用が認められています。
■ 環境価値の分離概念
【電力の価値構造】
電力量(kWh) → 物理的価値
環境属性(CO₂ゼロ等)→ 非物理的価値
→ 環境属性のみを証書として移転
この「属性の排他性」「二重計上の防止」「トラッキング可能性」が制度設計上の中核論点となります。
非化石証書(日本)
非化石証書は、エネルギー供給構造高度化法を背景に創設された制度で、日本卸電力取引所(JEPX)を通じて取引されます。現在は「再エネ指定」と「指定なし」が区分されており、RE100適合性を有するのは再エネ指定非化石証書です。
■ 制度的特徴
・FIT電源/非FIT電源双方が対象
・トラッキング⇒2024年度より全量トラッキング付きに
■ 実務上の論点
・FIT電源由来価値の社会的受容性
・追加性(additionality)の議論
・アワリーマッチングに対応していない
メリット
・国際制度(RE100、CDP)との整合性が高い
・市場規模が大きく価格安定性がある
デメリット
・追加性の観点では評価が分かれる
・長期固定価格契約(PPA)との比較で戦略性に課題
Jクレジット
Jクレジットは経済産業省・環境省・農林水産省が運営する認証制度で、排出削減量(t-CO₂)をクレジット化する仕組みです。電力属性というより「排出削減成果」の移転です。
■ 制度的構造
削減プロジェクト登録
↓
第三者検証
↓
クレジット発行(t-CO₂単位)
↓
償却(排出量と相殺)
■ 実務上の論点
・ベースライン設定の妥当性
・二重計上防止(国別NDCとの関係)
・Scope1・Scope2・Scope3いずれへの充当か
メリット
・オフセット用途に明確
・森林由来等のストーリー性が高い
・GX-ETSの自主目標達成に活用可能
デメリット
・再エネ電力の直接的代替とはならない
・市場流動性が限定的
グリーン電力証書
民間認証型の制度で、第三者機関が再エネ電力の発電量を認証し、kWh単位で証書化します。非化石証書以前の主流制度でした。
■ 特徴
・発電所単位でのトレーサビリティが比較的明確
・コーポレートPPAとの親和性あり
メリット
・ブランディング用途に適する
・中小規模案件との連携が容易
デメリット
・市場規模が限定的
・RE100適格性の整理が必要
I-REC(国際再エネ証書)
I-RECは国際標準に基づく属性証書で、各国の発電設備登録と発電量認証に基づき発行されます。アジア・中東・南米などで広く利用されています。
■ 制度的特徴
・国別レジストリ管理
・1MWh単位で発行
・GHGプロトコル整合
■ 実務上の論点
・ホスト国NDCとの対応関係
・二重計上の管理
・国別制度との差異
メリット
・グローバル企業のScope2管理に有効
・RE100で広く認知
デメリット
・国ごとの制度成熟度に差
・為替・政治リスク
主要証書の比較(制度観点)

戦略的活用の方向性
再エネ証書の選択は、単なるコスト比較ではなく、以下の軸で整理すべきです。
① 会計・報告基準適合性(GHGプロトコル)
② 追加性の確保
③ ブランド価値への寄与
④ 長期調達戦略(PPAとの関係)
特に近年は「追加性」や「24/7 カーボンフリー」といった高度な議論も進んでおり、単年度の証書調達だけでは不十分とする見方も強まっています。
おわりに
再エネ証書は、排出量管理ツールであると同時に、エネルギー戦略・財務戦略・レピュテーション戦略を横断する経営課題でもあります。
制度理解を深めた上で、自社の脱炭素ロードマップとの整合性を検討することが重要です。
今後は、証書単体の調達から、コーポレートPPAや蓄電池、時間一致型再エネ調達(アワリーマッチング)へと議論が発展していくと考えられます。
再エネ証書はその過渡期における重要な基盤制度として、引き続き注視すべきテーマといえるでしょう。
















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