日本電力調達ソリューション代表の高橋優人です。
こちらでは、私がお客様とやりとりさせていただく中で気づいたこと、ニュース記事を見て学んだこと等をリアルタイムで発信しています。
そのため、私の主観が入っておりますこと、ご容赦ください。読んでくださる方にとって、有益な情報になっていれば幸いです。
私は電力会社とも、お客さまとも接する立場にあります。
その中で見えてきたのは、両者には大きなズレがあるということです。
行き過ぎた値下げ合戦はなぜ起きるのか
私たちは、電気代を削減するのが仕事です。したがって、価格の安さは重要な要素の一つであることは間違いありません。しかし一方で、行き過ぎた値下げ合戦が再び戻ってきていることに、危機感を覚えます。
電気は商品そのものの差別化が難しいため、どうしても価格勝負になりがちです。電力会社の現場の営業担当は「負けたくない」という気持ちから、安易に値下げに走りやすいです。しかし、本質を理解しないまま値下げを続ければ、将来はお客さまに“予期せぬ値上げ”を伝えに行かなければならなくなります。
おそらく、どの電力会社の管理職の方は、その危うさを分かっているはずです。それでも営業成績が上がらなければ、値下げを許可せざるを得ないという状況があります。そして、どの会社も値下げが行われるので、お客さまも「値下げできるんだ」と捉えてしまうのです。こうして歯止めの効かない値下げ競争が続いた結果、2022年の電力高騰時には、想定外の値上げが起きてしまいました。
さらに、電力会社としても「kWhを稼ぎたい」という思惑があります。発電所からの仕入れにおいて、取引量が交渉力に影響するからです。したがって「顧客を獲得できないぐらいなら、利益度外視でも獲得するしかない」と考えてしまう構造的な事情もあるのです。
もちろん、効率化による販管費の低減や、独自ルートによる仕入れコストの削減は大歓迎です。しかし、それは“構造的な改善”であって、“永続的に値下げを続ける”こととは違います。
野菜でも、車でも、不動産将来の値段がずっと同じものはありません。電気料金だけが「一度下がったら二度と上がらない」と考えるのは、不自然なのです。
燃料費等調整額の実態は?
本来はそうならないために「燃料費等調整額」という仕組みがあります。しかし、これも実態としては市場調達とは大きくリンクしていません。市場価格が1円動いても、燃料費等調整額に反映されるのは0.25円程度にすぎず、さらに3〜5ヶ月前の平均燃料価格を基準にしているため、現状とのタイムラグが生じます。
その結果、キャッシュフローはどうしても悪化してしまうのです。
実際には、値下げを行うためには市場調達の割合を増やさざるを得ません。それは一種の“博打”です。しかも、多くのお客さまは「市場連動プランは嫌だ」と言われるケースが多いです。結果として、電力会社は市場から仕入れつつ、固定プランで提供せざるを得ないという矛盾した状況に追い込まれます。
市場が安定していれば問題は表面化しません。ですが、一度高騰すれば、翌年は確実に値上げとなります。1年契約+自動更新は「市場環境が変わらなければ」継続できますが、環境が変わった場合、値上げは当然の帰結なのです。
もちろん、電力会社側の都合による過度な値上げや理不尽な値上げ、あるいは強制解約は私も良くないと思います。しかし一方で、時には電力会社側のリスクが大きくなりすぎているケースがあることも事実です。
中には、お客さまに迷惑をかけないように、10年、20年といった長期の相対電源を持っている会社もあります。ただし、市場が安い場面では、そうした会社は相対的に価格競争で不利になります。しかし裏を返せば、それは価格高騰リスクを抑え、安定供給を守るための選択でもあるのです。
値下げは永久ではない
本来、マーケットの下落も上昇も正確に反映するのであれば、お客さまもリスクを背負う「市場連動プラン」を選ぶしかありません。それを避けながら「常に安く」「固定で」というオーダーは少し厳しいものと言えるでしょう。
ここで理解すべきなのは、「値下げは未来永劫続くものではなく、市場が良いときに一時的に還元しているにすぎない」ということです。私の感覚としては、惣菜コーナーに割引シールが貼られることによく似ていると思っています。
もし将来の値上げを受け入れられないのであれば、過度な値下げを求めないことが大事だと思います。反対にマーケットが安いときに、安く売ってほしいと思うのであれば、
割引は「期間限定」であると理解することが大事だと思います。
「喉元を過ぎれば、熱さを忘れる」と言います。しかし、日本のエネルギーの未来を考えるなら、その“熱さ”は案外すぐそばにあるのかもしれません。そしてもし今、2022年のロシア・ウクライナ問題の時のように燃料価格が再び高騰すれば、大きな混乱が起きる可能性が高いでしょう。
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